加齢に伴いテストステロン値が低下する症候をlate onset hypogonadism(LOH)症候群、加齢男性性腺機能低下症候群と呼びます。ちまたでは男性更年期障害と言われるものです。しかし、男性の場合は加齢による急激なテストステロンの分泌減少は頻繁に起こりません。極度の疲労やストレス、環境変化などでテストステロンの分泌が急激に減少し、LOH症候群の症状が現れることがあります。
その症状から「うつ病」と間違えられることもあるため鑑別が必要です。
LOH症候群の症状
身体症状
- 筋力低下、関節痛
- 発汗、火照り、のぼせ
- 睡眠障害
- 全身倦怠感
- 肥満、高血圧、高血糖
- 骨粗鬆症
精神症状
- 憂うつ感
- イライラ
- 不安
- 集中力低下、記憶力低下
- 意欲低下、無気力
性機能
- 性欲低下
- 勃起障害ED
- 射精障害
- 遅漏
- 射精量の低下
LOH症候群の診断
LOH症候群の診断にはAMS(Aging Male’s Symptoms)スコアが広く用いられています。
37点以上は医療機関の受診が必要な中等度異常を示します。
さらに血液中の遊離テストステロンの測定が7.5pg/ml未満ならば、明らかに低いとされ、7.5pgml~11.8pg/ml未満は低下傾向にあると判断されます。
遊離テストステロンの採血は午前11時までに行うことが推奨されています。
LOHの治療
LOH症状を有する40歳以上の男性が治療の対象となります。
遊離テストステロン値が7.5pg/ml未満の場合はテストステロン補充療法(TRT)を第一に行います。
7.5~11.8pg/ml未満の場合は漢方薬などの治療を試みて効果がなければ、テストステロン補充療法を3ヵ月試みて効果を評価するという治療法もあります。11.8pg/ml以上の場合はテストステロン補充療法の適応とはなりません。
テストステロン補充療法は一般的には男性ホルモン(エナント酸テストステロン)のデポ剤注射を2~4週に1回行います。
テストステロン補充療法によって、女性化乳房、にきび、多血などの副作用が出現することがあります。 テストステロンは前立腺肥大の進行を早める作用があるため、治療前にPSA検査(前立腺腫瘍マーカー)を行い、治療開始1年間は3ヵ月ごとにPSA測定、テストステロン測定、ヘモグロビン値など一般血液検査を行う必要があります。
テストステロン補充療法の禁忌
以下のような方にテストステロン補充療法は行えません。
- 前立腺癌
- PSA高値> 3ng/mL
- 中等度以上の前立腺肥大症
- 多血症
- うっ血性心不全
- 睡眠時無呼吸症候群(悪化の可能性があるため、CPAP使用を併用)
- 重度の高血圧症
- 高度の肝機能不全、腎機能不全
- 抗凝固薬使用者(注射剤の場合)
- 乳癌
- 挙児希望者(精子数が減少する可能性あり)
- アスリートでドーピング検査のある大会に出場する者